深夜、棚のざる蕎麦が囁いた。「今夜は特別な夜」と。
突如、黒衣の忍者が滑り込んできた。彼の手つきは慎重で、yet 大胆。
商品たちが、その指先に触れられ、ゆっくりと目覚めていく。
とろとろ...とろとろ...
カップ麺の湯気が立ち昇る。忍者の額の汗のように、
光を浴びて輝くそれは、まるで露のよう。
おにぎりの海苔が剥がされる。
その中の白い宝石が、月明かりに照らされ、
ゆっくりと、でも確実に、姿を現す。
アイスクリームが溶けだす。
とろとろと、なめらかな曲線を描きながら、
カップの縁をつたい落ちていく。
缶コーヒーのプルタブが開けられる音。
シュワっという炭酸の解放。
全ての音が、静寂の中で際立つ。
やがて夜が明ける。
商品たちは、いつもの場所に戻り、
昨夜の秘密を胸に秘めたまま、
新しい一日を迎える準備を始める。
忍者の姿は消えたけれど、彼の残した「とろとろ」の余韻は、
まだこの店内に漂っている。
私、このコンビニは、
明日も、彼が来てくれることを、
そっと、切なく、待ち望んでいる。
きゅぽきゅぽ...いや、ここではとろとろだ。
全てが溶け合い、一つになっていく。
この世界と、隣の世界と。
現実と、幻想と。